グリーフ とトラウマ
「赤ちゃんとの死別」という出来事は、親がそれまで生きてきた世界・日常を断ち切られるような出来事で、「死別」の中でも特に衝撃の強い、心の傷(=心理学的用語として、トラウマと呼ばれる)となりやすい死別体験だと考えられています。
赤ちゃんをなくした親が、その後の人生をどう生きていけば良いのか、どうにもならない痛み・苦しさからどうしたら抜け出せるのか。
グリーフ(大切なものを喪失した後の心・体の反応)・ケアという視点に加え、トラウマ(心の傷)のケアという視点からの取り組みも大きな助けになると考えられています。
◆参考図書
↑ トラウマから生じる様々な苦しい症状に対して、自分で理解を深め、できることに取り組めるように、ワークブック形式となっている本です。
自分の体験や感情を文字にして綴ったり、自助グループのお話会で繰り返し自分の体験を語る、などの作業は、「認知処理療法」で取り組むような内容のことを少しずつ実践することに通じると思います。
↑ トラウマとなるような体験をした当事者向けに、わかりやすく症状や対処法が説明されています。「トラウマとなる死別を体験した遺族の悲嘆反応」についての項目もあります。
↑ トラウマとなるような死別という出来事は、その後の周囲の人との人間関係にとても大きな影響を及ぼすということ、その変化をどのように捉え、対処したら良いのか、具体的・詳細に書かれています。
◆参考ウェブサイト
◆論文
「外傷性悲嘆の心理臨床ーブロークンハートを生きる」 山本力
平成27年度「子どもの心的外傷性悲嘆に関する効果的な啓発ツールについての研究 子どもの心的外傷性悲嘆に関する効果的な啓発ツールについての研究」
グリーフの反応や過程は人それぞれに、とても苦しいものだと思いますが、時間をかけながら、少しずつ変化していきます。ただ、死別の状況やその後のサポートの有無によっては、長期にわたって苦痛が強度で、日常生活が大きく支障されてしまう場合があり、そのような時には、心理療法の専門家(グリーフについて詳しい)への相談も1つの選択肢になります。
赤ちゃんをなくした後、長期間(目安は6〜12ヶ月以上)、死別直後と同様もしくはそれ以上の強い苦しさが続いている場合、なんらかの認知(出来事に対する考え)がグリーフ のプロセスを滞らせ、グリーフ を複雑化させている可能性があります。
このような、グリーフの中でも専門的な対応が必要と考えられる状態は、専門用語で「複雑性悲嘆(最近のアメリカの診断基準では遷延性悲嘆症)」と呼ばれ、うつ病やPTSDなどの精神疾患の併発も少なくないと考えられています。
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