入院中にできること
大切な赤ちゃんとのお別れの前に、産後、入院中の病院でできることを考えるページです。
流産・死産や生まれたばかりの赤ちゃんを亡くした場合、赤ちゃんの体と過ごせる時間は数日と短く、そのわずかで貴重な
時間をどう過ごすかは、その後の悲しみのプロセスにも大きく影響します。
ですが、突然の赤ちゃんの死に呆然としてしまい、葬儀後しばらく経ってから、「赤ちゃんのためにできることが色々あっ
たのに、私は何もしてあげられなかった」と悔やみ、自分を責めている親御さんも少なくありません。
大切な赤ちゃんのために、あなたやご家族がしてあげたいことはないでしょうか?
ショックを受け混乱した頭で自ら考え、行動することはとても大変なことですが、あなたの赤ちゃんのために何ができるのか、周りの人に支えてもらいながら考え、選びとり、大切な時間を悔いなく過ごせるように、心から願っています。
目次)
1.赤ちゃんを大切な家族として迎え、共に過ごす
2.お別れの前の準備(産着、棺、埋葬品)
3.ご家族の心の反応(グリーフ )について
1.赤ちゃんを大切な家族として迎え、共に過ごす
赤ちゃんと一緒に過ごす
赤ちゃんを大切な家族の一員として迎え、家族として過ごした温かな時間が、その後の悲しみを支える大きな力となったとお話しされるご家族が少なくありません。
可能であれば、周囲を気にせず赤ちゃんとゆっくり過ごせるように、個室を希望されると良いと思います。
過ごし方の例)
・体をきれいにしてあげる、沐浴させる
(赤ちゃんの皮膚・体の状態によってできることが変わるので、看護職員に相談しましょう)
・赤ちゃんをコットに寝かせ、母子同室で過ごす
・名前をつけ、周囲の人にも名前を呼びかけてもらう
・体に触れる、撫でる、抱っこする
・子守唄を歌う、読み聞かせをする
・初乳を含ませる、枕元にお供えする
・身近な家族みんなで一緒に過ごす 〜家族で行きたかった場所(自宅、公園や海など)に行った方もいます
赤ちゃんとの思い出の品をのこす
お別れの直後は、思い出すことがあまりに悲しくてつらいので、思い出の品を見ることができない時期がありますが、時間
の経過と共に、赤ちゃんの存在を確かに感じたくなるときがやってくると思います。その時のために、思い出の品を残してお
くことはとても意味のあることだと思います。
赤ちゃんとの思い出の品(例)
・母子手帳
・妊娠中のエコー写真
・へその緒
・手形、足形(産まれた時間、体重、身長などを記載)
・赤ちゃんの爪、髪の毛 ~遺骨ペンダントに入れて、身に付けることもできます
・赤ちゃんとの家族写真
↑ アメリカでは、プロのカメラマンが、亡くなった赤ちゃんとの思い出の写真を撮ってくれるというボランティア活動が一
般的に行われているそうです。
近年は、病院でも、「赤ちゃんをなくした家族のケア」にこころを配り、赤ちゃんとの思い出作りやお見送りの準備に協力
してくださる場所が少しずつ増えていますが、まだ、地域や病院による差も見られます。
医療者も私たちにどう関われば良いのか戸惑っている場合があるので、こちらから思い切って相談してみると、協力が得られるかもしれません。
↓ 北九州市立医療センターの取り組み(西日本新聞ウェブサイト 2016.9.24 記事より)
2.お別れの前の準備(産着、棺、埋葬品)
きょうだい児を、なくなった赤ちゃんと会わせるかどうか、葬儀に参加させるかどうか等、悩まれるご家族もいらっしゃると思います。
子どもは年齢・発達に応じて死への理解を深めていきます。その子の年齢・理解力に合わせて、わかりやすい言葉で状況を説明しながら、「大切なきょうだい」である赤ちゃんとの時間を過ごし、家族として一緒に赤ちゃんの死を悼むことができればと思います。
↓ 子どもへの伝え方について、具体的にまとめられた記事です。
3.ご家族の心の反応(グリーフ )について
大切な赤ちゃんをなくした家族が経験するこころ・からだの反応は、「グリーフ (悲嘆)」と呼ばれています
身近で大切な人をなくしたとき、私たちは強いショックを受け、様々な感情やからだの反応を体験します。
これらの反応・プロセスは、死別後の「グリーフ(=日本語では悲嘆)」と呼ばれています。
流産や死産、新生児死などで小さな命を失ったときも、このグリーフ と呼ばれる反応が生じます。
多くの人が、これまでに経験したことのない深い悲しみや怒り、自分や他者を責める気持ち、周囲から取り残されたような
孤独感、不安など様々な感情を体験し、これらの圧倒的な感情体験に戸惑い、「これから私は一体どうなっていくのか」と
いう強い不安を感じています。
悲しみ、グリーフの形は、ゆっくり時間をかけながら、少しずつ変化していきます
グリーフ のさなかでは、どんな感情を感じてもおかしくはありません。
かけがえのない存在・命をなくすという、予期できない、とても理不尽な出来事がおきたのですから、通常は感じることの
ない様々な感情が湧き起こり、コントロール困難に感じることも多いと思います。
どうぞ、そんな自分を否定しないであげてください。
悲しみや怒りを感じる自分を、ありのままの自分を、そのまま受け止めて、いたわってあげてください。
今はそうは思えないかもしれませんが、「この苦しみがずっと同じ状態で続くわけではない、少しずつ楽になる時がくるの
だ」と信じてみてください。