周囲の人との関係 祖父母、親戚、友人
大切な人をなくすという出来事は、周囲の様々な人との人間関係に大きな影響を及ぼします。
流産・死産などで赤ちゃんをなくした場合は、赤ちゃんと周囲の人との関係性がまだ十分にできていなかったり、小さな命に対する個々人の認識に違いが大きかったりするため、「赤ちゃんの死」をどのように受け止めたらよいのか、周囲の人も戸惑いやすく、赤ちゃんの両親とのコミュニケーションで食い違いが生じやすいと考えられます。
流産や死産などお腹の中の赤ちゃんをなくすという出来事も、親にとっては「かけがえのない一人の命、我が子をなくす」という体験であることが想像できず、あなたを励まそうとして、下記のような言葉をかけられることがあるかもしれません。
「また次があるよ」「次、頑張ればいいじゃないか」
「運命だったんだよ」「大きな病気があって、生まれてきても大変だったよ」
「早い時期の流産は胎児の染色体異常が原因でさけられない、よくあることだ」
「いつまでも悲しんでいないで」「早く忘れた方がよいよ」
こういった、周囲の人の悪意のない、善意から励まそうとしての言葉で傷ついたとお話しされる家族の方は少なくありません。大切な赤ちゃんをなくしたあと、残された家族にはグリーフと呼ばれる心と体の反応が起きること、そして、その後の人生に適応するためには周囲が思うより長い時間(半年〜年単位かかることが多い)が必要であることを、多くの人が知りません。
身近な人、これからも継続して関わる必要がある人には、あらかじめ赤ちゃんをなくした両親のグリーフについてわかりやすくまとめられたリーフレットや書籍を読んでおいてもらうと、自分の気持ちが伝えやすくなり、今後のコミュニケーションが楽になるかもしれません。
【参考となる資料】
*「流死産で大切な子どもを亡くしたあなたとご家族へ」
岡山県「不妊・不育とこころの相談室」作成リーフレット
*札幌市「ご家族のためのこころのサポート・ガイド」
*「天使の保護者ルカの会」パンフレット、小冊子
↓ 赤ちゃんをなくしたご家族へは無料(送料は実費)で郵送してくださるそうです。
*SIDS家族の会 「ちいさな赤ちゃん あなたを忘れない」
SIDS家族の会が刊行している小冊子で、同会のウェブサイトから購入(1冊500円、家族の会に入会すると無料でいただけます)できます。流産・死産・新生児死の悲嘆のプロセスについてわかりやすくまとめられています。赤ちゃんとのお別れの仕方や周囲の人へのアドバイスもあり、母親だけではなく、家族の皆さんで読まれると役に立つと思います。当事者の手記もまとめられています。
*「When Our Grandchild Dies」 祖父母に向けたリーフレット (英語)
↓ 孫をなくした祖父母のグリーフについて、丁寧にまとめられています。
* 祖父母、成人したきょうだいのグリーフについてのスライド(英語)
*「グリーフ・サバイバー」サイトより
大切な家族をなくした時、家族メンバーそれぞれの形でグリーフを体験する中で、家族全体への影響、家族関係の変化が生じること、変化にどう適応していけばよいのか等がまとめられています。
*「グリーフ・サバイバー」サイトより
赤ちゃんをなくした家族を支えたいと願う周囲の方へ、グリーフ・サポートに関する基本的知識がわかりやすくまとめられています。
*周囲の人にとって、どのような配慮が望ましいか、まとめられた記事です。
「死別後の人間関係の悩み」の中身は様々ですが、このテーマへの対処法を考えるときに、その人が元々、健康的なコミュニケーション技術を身につけているかどうかは、大きなポイントとなるように思います。
健康的なコミュニケーションのあり方を考える時に役に立つ考え方がいくつかあるのですが、そのうちの1つが「アサーション」の考え方です。「アサーション」は英語で、相手も自分も大切にする、健康的な人間関係をつくるための、自己表現のあり方を指しています。死別後に限らず、対人関係の悩みの多い方は一度、アサーション関連の書籍を読まれると、きっと役に立つのではと思います。
また、周囲との関わり方・人間関係について考える時に、「対人関係療法」という精神療法の考え方も役に立つと思います。対人関係療法は、精神科臨床で使用されている心理療法の1つで、うつ病などの精神疾患に対する有効性が医学的に認められています。日本では、精神科医の水島広子先生が、この対人関係療法の考え方に基づいた一般向けの書籍を多数出されていて、死別後の人間関係を考える際にも参考になると思います。
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