夫婦関係への影響
大切な人をなくすという出来事は、周囲の様々な人との人間関係に大きな影響を及ぼします。赤ちゃん・子どもをなくした場合は、死別後しばらくの間、夫婦間のコミュニケーションに困難を感じる方が少なくありません。
周囲との関わり方・人間関係について考えていく時には、「対人関係療法」という精神療法(精神科臨床で使用されている治療法の1つ)の考え方が役に立つと思います。
下記は、一般の人向けに書かれた夫婦関係をテーマにした書籍です。対人関係療法の基本的な考え方に基づき、夫婦関係で生じやすいコミュニケーションの食い違いとその具体的な対処方法が説明されています。
グリーフの表出の仕方や向き合い方には性差の影響もあると考えられています。父親は、死別直後から社会的な役割をこなすために、悲しみを抑圧してやり過ごすという対処をとっていることが多く、妻から見ると「夫はもう立ち直ったように見える、悲しくないのだろうか?」と食い違いを感じたり、「私の気持ち、つらさを分かってもらえない」と不満を感じたり、夫婦関係に影響する場合があります。
こういった「赤ちゃんをなくした夫婦の間で生じやすい葛藤のパターン」を理解し、葛藤を解消するためのコミュニケーションの工夫(それぞれのグリーフを互いに尊重し否定しない、自分の気持ちを素直に伝える、言わなくても察してほしいという期待は手放し、相手にしてほしいことは具体的にお願いする等)を心がけることは、死別後の夫婦関係を維持していく上でとても大切な視点です。
*周産期喪失後の危機的状況を夫婦で歩み新たな家族をつくる物語(H27年科学研究費助成事業研究成果報告書)
*死産・新生児死亡で子どもを亡くした父親の語り 今村美代子 日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, No. 1, 49-60, 2012
*不育症夫婦における夫の流死産時の医療者の支援・社会的支援への思い
秦久美子、大平光子、中塚幹也 川崎医療福祉学会誌 Vol. 29 No. 1 2019 63 - 74
*子どもを喪失した父親の体験と看護者へ望む支援
吉田 静, 佐藤 香代 日本助産学会誌2022 年 36 巻 2 号 p. 212-224
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